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目標管理

SMARTから「SMILE」へ——コレドウ大感謝祭で志水静香さんに教わった、心が踊る目標設定

曽良 竜太 (コレドウ代表取締役)
SMARTから「SMILE」へ——コレドウ大感謝祭で志水静香さんに教わった、心が踊る目標設定

先日開催した「コレドウ大感謝祭」で、コレドウ顧問の志水静香さん(株式会社Funleash 代表)に、目標設定のミニワークショップをやっていただきました。15分の“さわり”だけのつもりが、会場の温度が一気に上がる時間に。今日はそのレポートを、私(曽良)視点でお届けします。

「評価」と呼ぶから、給与の話になってしまう

静香さんの第一声で、ハッとさせられました。「“評価”って言うと、みんな“給与を決めるもの”だと思っちゃうんですよね」。だからあえて、世界中で通じる言葉「パフォーマンスマネジメント」と呼んでいる、と。

その目的を管理職に聞くと、ほとんどが「給与の決定」「モチベーション向上」と答える。どちらも間違いではない。でも、いちばん大きな目的が抜け落ちている——組織が事業で目指す姿を、達成すること。そしてもう一つ、文化を変えることです。「どんな行動・発言をする人が評価されるのか」を示すことが、組織の文化をつくっていく。給与や報酬の決定は、その中の“一要素”にすぎない。

「もし給与を決めるためだけなら、評価制度はやめてしまったほうがいい」。静香さんがそう言い切ったのが印象的でした。給与を決めるだけなら、計算式やツールを作ればいい——それで用は足りてしまう。だからこそ、評価制度の本当の目的は“そこじゃない”、という意味です。

評価を「点」や「線」で捉えがちだけど、静香さんのイメージは“らせん(コイル)”。目標設定 → 対話 → 評価 → 報酬を、ずっと回し続ける。その循環全体が、文化づくりであり、事業目標の達成につながっていく。——これ、コレドウがずっと言っている「制度より運用」と、まっすぐ重なる話でした(なぜ評価制度は「作っても回らない」のか)。

「点から線へ、管理から成長へ」——志水静香さんによるパフォーマンスマネジメント・ワークショップ
「点から線へ、管理から成長へ」——志水静香さんによるパフォーマンスマネジメント・ワークショップ

SMARTじゃ、心が踊らない——静香さんの「SMILE」

そして本題。「SMARTって、研修で必ず出てきますよね。でも私、ずっとこの仕事をやってきて、あれで全然“心が踊らなくて”」。そう言って静香さんが出してきたのが、ご自身が考案した目標設定フレーム「SMILE(スマイル)」です。

SMARTが「具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限」という“管理者目線”の枠だとすれば、SMILEは「働く本人が、やりたくなる」目線。5つの頭文字はこうです。

  • S:Self-driven(自分発) — 上司から与えられるのではなく、自分の関心・得意・なりたい姿から生まれているか。「人に言われたことは、やりたくない。日本企業のエンゲージメントが低いのは、ここなんじゃないか」。
  • M:Meaningful(意味づけ) — 自分にとって納得感があり、学びや成長が期待できるか。「これは特に若い人に響くんです」。
  • I:Integrated(統合された) — 個人の目標が、組織の方向性や事業・チームの目標と整合しているか。パフォーマンスは組織で出すものだから、ここは“できれば”ではなくMUST。
  • L:Learning-oriented(学習志向) — 「できた/できない」で終わらせず、できるようになるために何が足りないかを考え、学ぶ意欲をかき立てる。プロセスそのものが学びになっているか。
  • E:Engaged(対話と支援) — リーダーとメンバーが本音を伝え合える関係性の中で磨かれているか。「これは1on1の、本来の目的でもあるんです」。

SMILEの詳しい定義は、静香さんご本人が書かれています。ぜひ原典を:志水静香さんのnote「SMARTからSMILEへ──目標設定は、上司と部下の協働作業」

ちなみに静香さんは、1on1の目的をこう話していました。「メンバーの“表面”じゃなく、その人が何を大事にしていて、何が好きで、何に腹を立てて、何にワクワクするのか。それを深く理解するために1on1がある」。価値観や信念といった内面まで理解することが、1on1ではもっとも重要。そこまで深く理解したうえで目標設定をする——SMILEのEは、まさにここに効いてきます。

SMILEを“体感”する、15分ワークショップ

面白かったのは、SMILEを座学で説明するんじゃなく、ワークで体感させる設計でした。お題は、ある地方の老舗料理店。「年商10億円を、2030年に20億円へ。日本を代表する店にしたい」。参加者は、その店の責任者になったつもりで——

  1. 制限なしで、アイデアを全部出す(付箋に、思いつくまま。数が多いほどいい)
  2. 自分がいちばんワクワクするものに星をつける(全部はやらない。“捨てる”ことが大事)
  3. 人材・顧客・事業の3カテゴリに分類する
  4. 対話する(他の人のアイデアを聞いて、変わってもいい。盗んでもいい)
  5. 責任者として、目標を1〜2個に絞って決める

専門外のテーマなのに、出てくる出てくる。「歌舞伎など日本文化との融合」「人気IPキャラとのコラボ」「ホテルと連携した顧客体験で付加価値を」。たった15分で、参加者の目がキラキラし始めたのが、本当に印象的でした。

付箋にアイデアを出し、対話で磨いていく
付箋にアイデアを出し、対話で磨いていく
会場全体がワークに没頭。15分で温度が一気に上がった
会場全体がワークに没頭。15分で温度が一気に上がった

静香さんいわく、これを役員チームとは1〜2日、自分のチームとは半日〜1日かけてやるそう。「経営者ひとりでは、考えきれないんです。課題が複雑になってきてるし、外部環境が予測できない中で常にすべてを把握し、一人で解決するのはもはや無理。何よりお客様や現場をいちばん知っているメンバーこそ、“お客様にどんな価値をもたらせるか”のアイデアを、いちばん豊富に持っている」。

なぜ「ひとり」じゃなく「みんな」で作るのか

このワーク、本質は“目標を、みんなで作る”ことにあります。静香さんが、ロサンゼルスの会議で聞いたという話を紹介してくれました。世界的に評価されるニューヨークのレストランも、最初はオーナーがひとりで考えていた。それを、料理を出すスタッフまで含めて全員で考えるように変えたら、何百個ものアイデアが出てきた。そして「これ、誰がやる?」と手を挙げてもらう形にしたら、3年でメンバーの意識がまるで変わった——「自分のやりたいことをやらせてくれる」ことへの感謝とともに。

短い時間でも、専門外でも、これだけアイデアが出る。ということは、組織の中のメンバー一人ひとりが、本当はたくさんのアイデアを持っている。それを引き出して、本人の強みや関心とつなげてあげる。それがマネジメントの仕事なんだと静香さんは言います。

テーブルごとに対話。「誰がやる?」を本人に委ねていく
テーブルごとに対話。「誰がやる?」を本人に委ねていく

リーダーへの、4つのメッセージ

最後に、リーダー(部門長・管理職)向けに静香さんが残した言葉を、4つに整理して残しておきます。

  1. 方向性を示す — 「会社はこっちに向かう」を伝える。そして現状とのギャップを「私が見落としていることはある?」とメンバーに確認しながら見ていく。
  2. 蓋をしない(拡散) — メンバーからアイデアが出たら、「いいね、やってみよう。できるか分からないけど」とまず受け止める。
  3. みんなでブラッシュアップ — グループで揉んで、磨く。
  4. 本人に任せる — 「誰がやる?」は、手を挙げてもらう。決めるのはリーダー。

そして、刺さった一言。「目の前のことだけで目標を立てると、絶対つまらない。“売上を伸ばす”“ミスをなくす”——超つまらない目標になる。だから、未来に向かうんです」。AI時代のリーダーの仕事は、メンバーがパフォーマンスを発揮できるよう寄り添い、障害を取り除くこと。共感して、励ますこと。この“人間性”の部分だけは、AIに渡してはいけない。そして、この一連を“らせん”のように、ずっと回し続けること。

SMILEとコレドウの「評価運用」は、同じ方向を向いている

聞きながら、何度も頷いていました。SMILEの5要素は、コレドウがずっと言ってきたことと、驚くほど重なります。

  • S(自分発)=「本人の言葉で、みんなで作る」目標(目標設定の方法
  • M(意味)=「やりたい」と「やってほしい」が重なる目標
  • I(統合)=経営 → 組織 → 個人の“接続”(目標管理とは、評価のための作業じゃない
  • L(学習)=「できた/できない」で終わらせず、回して直すPDCA
  • E(対話と支援)=“目標”という共通言語があるから、対話する機会が生まれ、そこからエンゲージメントが育っていく

評価を“給与を決める作業”から、“組織を動かすパフォーマンスマネジメント”へ。静香さんのSMILEは、その入口にぴったりのフレームだと感じました。

会場では語りきれないほどの中身があって、ここに書けたのはまだ一部です。SMILEの詳細は静香さんのnoteを、そして「この目標設定ワークを自社のチームでやってみたい」「もっと話を聞きたい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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