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評価運用

MVPに「あれ、どうやってるの?」と聞きに行く人がいる会社——表彰が文化になるまでの3段階

・曽良 竜太 (コレドウ代表取締役)
MVPに「あれ、どうやってるの?」と聞きに行く人がいる会社——表彰が文化になるまでの3段階

MVPを取った人に、あとから個別で問い合わせが来る会社があります。

「あれって、どうやってるの?」

「どうしたらそんなに上手くいくの?」

表彰式で紹介された仕事について、もう少し聞きたい。自分の仕事でもやってみたい。そう思った人が、受賞者のところへ聞きに行く。

僕は、この話が好きです。表彰は、ここまで効かせることができる。そして、ここまで行くかどうかは、設計で決まると思っています。

この記事の要点

  • 表彰の効き方には3段階ある。何も起きない、自分も取りたいと思う、なぜ取れたのかを研究する
  • 3段階目まで行く会社は、何を称えるかの基準が常にクリアで、受賞者が自分の理由を語れる
  • 推薦する側の「取らせてあげたい」は正しい。基準があれば、その気持ちは「この軸で頑張らせたい」に変わる

表彰は、どこまで効くのか?

3段階あると思っています。

レベル1は、何も起きない。他人事です。しばらくすると、誰が取ったかも忘れられています。

レベル2は、自分も取りたいと思う。名誉が欲しくなる。喜ぶ人がいて、悔しい人がいる。いつか取りたい、と思う人が出てきます。

レベル3は、なぜその人が取れたのかを研究する人が出てくる。受賞者に話を聞きに行き、やり方を知って、自分でも試す。ここまでいくと、文化につながります。

多くの会社の表彰は、レベル2で止まっています。それ自体は悪いことではありません。ただ、レベル3まで行くと、表彰式が終わったあとも効き続ける。会社が大事にしたい仕事のやり方が、人から人へ伝わっていく。

レベル3の会社は、何が違うのか?

受賞者が、自分がなぜ取れたのかを語れます。

聞きに行けるのは、本人が理由を知っているからです。何が良かったかが決まっていて、本人もそれを分かっている。だから聞かれたときに答えられるし、聞く側も何を聞けばいいか分かる。

逆に、受賞した本人がいちばん驚いている表彰があります。毎月表彰があって、毎月基準が違って、誰が選ばれるか読めない。本人に理由が分からなければ、周りにも伝わらない。聞きに行きようがありません。

分かれ目は、基準が常にクリアで、その軸の中で頑張る方向が分かりやすいことです。それと、頻度。頻度が高いこと自体は悪くないのですが、頻度が高くて基準が揺れると、毎月選ぶために毎月理由を探すことになります。

基準がいつも同じで、みんなが知っていると、表彰は方針の提示になります。この軸で頑張れば取れる、というのが見える。だから受賞者を研究する意味が出てきます。

日常の称賛や、褒められる頻度の設計については、「忙しくてフィードバックできない」は、順番が逆と半年に一回しか褒められないゲームを、誰がやるのかで書きました。表彰は、そのイベント側の話です。

「取らせてあげたい」を、届く形にするには?

基準があれば、届きます。

表彰の裏側には、推薦する側がいます。マネージャーは、自分の部下を取らせてあげたい。「あの人に取らせたい」「ようやく取らせることができた」。僕もそうでした。推薦する側に立ったことは何度もあって、取らせてあげられなかったことのほうが多い。

この気持ちは、正しいと思っています。部下の仕事を認めてほしい、というのはマネージャーの自然な願いです。

ただ、基準が見えない表彰では、この気持ちの行き場がなくなります。何が良かったかで決まらないなら、誰が推したかで決まる。組織票のようになる。あるいは、僕がそうだったように、何を推していいのか分からなくなって、票を出さなくなる。

基準がクリアだと、推薦する側の動きが変わります。「取らせたい」が「この軸で頑張らせたい」になる。取らせるために推すのではなく、取れるように育てる。推す気持ちはそのままで、向かう先が変わります。

表彰と評価は、つなぐべきか?

文化とモチベーションを目的にするなら、つなぐべきだと思っています。

表彰で「こういう仕事を大事にしている」と伝えているなら、普段の評価でも同じ軸を大事にする。そこがつながっていると、受賞を目指して頑張ることが、そのまま自分の仕事を良くすることになります。

そして、基準を持つなら、「今年は該当者なし」があってもいい。

基準に届く人がいない年は、出さない。毎年必ず誰かを選ぶと、基準ではなく枠で選ぶことになります。届く人がいないときも基準を大事にしているからこそ、受賞したときに「何が良かったのか」が伝わります。

称える機会を作りたい、という目的もある

表彰の目的は、一つではありません。

効いていないように見える表彰でも、話を聞くと、称賛する文化を作りたくてやっていることがあります。誰かの頑張りに目を向けて、みんなで称える機会を毎月作る。それ自体を文化にしたい、という考え方です。

これは、文化形成とモチベーションのための表彰とは、目的が違います。違うからこそ、悪いとは思いません。

ただ、もし表彰で人を動かしたい、方針を伝えたい、文化を作りたいと思っているなら、設計はこう変わります。基準を固定する。頻度を落とす。評価とつなぐ。該当者なしを許す。

そうやって設計した表彰のあとに、受賞者のところへ「あれ、どうやってるの?」と聞きに行く人が出てくる。それが、表彰がレベル3まで届いた合図だと思っています。

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