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評価運用

「忙しくてフィードバックできない」は、順番が逆——頻度の設計と「マジ謝謝の会」の話

曽良 竜太 (コレドウ代表取締役)
「忙しくてフィードバックできない」は、順番が逆——頻度の設計と「マジ謝謝の会」の話

この記事の要点

  • 「忙しくてフィードバックの時間が取れない」は順番が逆。定期的にFBしないから、期末にまとめて重くなり、日頃のトラブルが増えて忙しくなる
  • 頻度は人に合わせて変える。オンボード中は毎日でもいい。巣立ったら週1、任せられるなら隔週——ただし下限は月1
  • ネガティブなFBができないのは、勇気の問題ではなく「場の設定」の問題。ポジもネガも含めて伝え合う場だという合意と信頼があれば、困ることはない

「フィードバックって、どのくらいの頻度でやればいいんですか?」——マネージャーからよく受ける質問です。今日はこれに答えます。ただその前に、もっとよく聞くセリフを片付けさせてください。

「忙しくて、フィードバックの時間なんて取れないんですよ」——これです。

「忙しくてできない」は、順番が逆

厳しいことを言いますが、忙しくてフィードバックの時間が取れないと言っている人は、マネージャーをやめたほうがいいと思います。その人は、マネジメントをやっていないので。

だってそうでしょう。メンバーのパフォーマンスを上げること以外に、マネージャーの仕事って何があるんでしたっけ。フィードバックは「業務の合間にやる余談」ではなく、業務そのものです。

そして、もっと大事なことを。そもそも、定期的にフィードバックをしないから忙しいんです。日頃に小さく返していれば数分で済んだ軌道修正が、期末まで放置されて大工事になる。ズレたまま走ったメンバーの手戻りが発生する。期末にまとめてフィードバックしようとするから、面談は重くなり、準備に時間が溶け、しかも本人は納得しない。順番が、逆なんです。(期末に驚かせる評価が何を壊すかは、なぜ評価制度は「作っても回らない」のかに書きました。)

頻度の正解:人に合わせて変える。ただし下限は月1

で、本題の頻度です。僕の答えは「人によって変える」。

  • オンボード中の人:毎日でもいい。まだ地図を持っていない人に、道を間違えたまま1週間走らせない
  • ある程度巣立った人:週1に
  • 任せられる人:隔週、さらには月1へ、意図的に頻度を落としていく

ポイントは、頻度を落とすこと自体が「あなたを信頼して任せている」というメッセージになることです。逆に、任せられる人に毎日張り付くのはマイクロマネジメントになる。成長に合わせて、ハードルとフィードバックの間隔を調整していく——ゲームのレベルデザインとまったく同じ発想です(半年に一回しか褒められないゲームを、誰がやるのか)。

ただし、下限は月1。それより空くと、フィードバックは「振り返り」ではなく「考古学」になります。お互い、何があったか思い出せないので。

週次でやっていた「マジ謝謝の会」の話

頻度の話をすると「毎週なんて、何を話すんですか」と聞かれるので、僕のチームで実際にやっていた運用を紹介します。前提として、ここまで話してきた1on1——上司からの個別のフィードバック——は、それはそれで回していました。そのうえで、週に一度、全員の場を別に持っていたんです。

まず各チームが進捗を10分ずつ共有します。ここは普通です。面白いのはその後で、「マジ謝謝の会」というのをやっていました。全員が、今週伝えたい「ありがとう」を発表していくんです。ルールは2つだけ。バイネームで(○○さん、と名指しで)。そして具体的に(何をしてくれたことへの感謝か)。

これがすごく良くて。毎週やっているのに、なんか泣いちゃう人が出るんですよ。

ちなみに、なぜ「ありがとうの会」ではなく「マジ謝謝の会」なんてふざけた名前なのか。面と向かって「ありがとう」と言うのは、結構恥ずかしいからです。真顔の感謝は照れる。でも、ちょっとふざけたノリが入っていると、するっと言える。このゆるいネーミングも含めて、場の設計なんです。

これは、上司からのFBとは別物の、メンバー同士の相互フィードバックです。感謝も立派なフィードバックで、「あなたのあの行動が、誰かに効いていた」という事実の通知だから。半年に一回の評価面談で褒められるより、毎週バイネームで感謝が飛んでくるチームのほうが、人が動くに決まっています。

そしてもうひとつ、この場にはリーダーの仕事があります。誰かの謝謝に、「その謝謝、いいよね!」と乗っかること。リーダーが何に反応したかで、メンバーには「あ、そういうことをすればいいのね」が明確になる。つまり感謝の場が、そのまま「何が評価される行動なのか」という基準を伝える場になるんです。上司からの1on1、仲間からの謝謝、そしてリーダーの乗っかりによる基準の明確化——この三層で、フィードバックは回ります。

ネガティブなFBは、「場の設定」で決まる

最後に、みんなが悩むやつを。「ポジティブはいいけど、ネガティブなフィードバックがしづらい」問題です。

ネガティブなFBができない理由は、あなたの勇気が足りないからではありません。「この人はネガティブなFBをしない」と思われているから、できないんです。つまり、場の設定の問題。

普段雑談しかしていない相手に、雑談の中で急にネガティブなFBなんてできるわけがない。そりゃそうです。でも、「この場は、ポジもネガも含めて、あなたのために伝える場だし、あなたの話を聞く場だ」という設定が最初に合意されていて、そこに信頼があれば、ネガティブなFBで困ることは特にありません。言われる側も「この場はそういう場だ」と分かっているから、受け取れる。

場の設定と、信頼。これは1on1でも、評価面談でも、マジ謝謝の会でも同じです。ふざけた名前で感謝を言いやすくするのも、ポジネガの合意で指摘を受け取れるようにするのも、やっていることは同じ——器を先に作る。中身はその後です。(リーダーとメンバーが本音を伝え合える関係が大前提——という話は、顧問・志水静香さんのSMILEのE(対話と支援)ともつながります。)

まとめ:フィードバックは、業務そのもの

  • 「忙しくてできない」は逆。定期的に返さないから、期末が重くなり、手戻りで忙しくなる
  • 頻度は人に合わせる。オンボードは毎日、巣立ったら週1、任せたら隔週。下限は月1
  • FBは三層で回す。上司からの1on1、仲間からの相互FB(感謝・バイネームで具体的に)、そしてリーダーが良い謝謝に乗っかることで「評価される行動」の基準が伝わる
  • ネガティブFBは勇気ではなく場の設定。「ポジネガ含めて伝え合う場」の合意と信頼を先に作る

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