コレドウ
組織開発

部下のモチベーション、「お金か承認か」で考えていませんか?——源泉は、もっと細分化されている

曽良 竜太 (コレドウ代表取締役)
部下のモチベーション、「お金か承認か」で考えていませんか?——源泉は、もっと細分化されている

この記事の要点

  • 「お金か、承認か」という分類は、メンバーの現場では粗すぎる。モチベの源泉は、もっと細かく、人によって別次元にある
  • 見極める方法は、対話しかない。しかも「聞く」前に、マネージャー側の自己開示と「達成できないのは自分の責任」というスタンスが土台になる
  • 源泉が分かっても、“どう接するか”のマニュアルは要らない。一緒に達成し、できたことを言語化し、「どうありたい?」を聞く——このプロセスを回していれば、接し方は自然とわかるし、自然とできるようになる

「部下のモチベーションを上げたい」。マネージャーからいちばん多い相談かもしれません。で、たいてい話は「お金なのか、承認なのか」あたりで止まる。でも僕は、その分類、現場では粗すぎると思っています。今日は、モチベーションの“源泉”の話をします。

3人の部下が、O・KR・Aにそれぞれ燃えていた

前のチームに、3人のメンバーがいました。この3人が、面白かった。同じ目標に向かっているのに、燃えるポイントがまるで違ったんです。しかも、きれいに3つに分かれていた。

  • 1人目は、「なぜやるのか(O=Objective)」が定まると、燃える。意味が腹落ちすると、動きが変わる人
  • 2人目は、「KPI(KR=Key Result)」の達成に力を注ぎたい。数字を追うこと自体が楽しい人
  • 3人目は、「アクション(A)」をタスクリストで一個ずつ潰していくことに、モチベがある人

……お気づきでしょうか。O、KR、A。目標の構造そのままに、3人の源泉が分かれていた。(このO・KR・Aの話はOKR、「特性」をわかって使っていますか?に書きました。)

しかも、もう1人いて。その子はO・KR・Aのどれでもなく、「問題解決を、自律的にできるかどうか」にモチベがあった。誰かに指示される前に、自分で課題を見つけて解いていく——そこに火がつくタイプ。

この経験で、はっきり分かったことがあります。「お金か、承認か」なんて分類じゃ、全然足りない。メンバーレベルの源泉は、もっと細分化されているんです。

「お金か、承認か」では、粗すぎる

なぜ、粗くなるのか。扱っているレイヤーが違うからだと思います。

経営者や役員のレイヤーになってくると、たしかに「お金なのか、承認なのか、影響力なのか」という話になる。マズローの欲求段階のように、人によって“いる段”が違う、という整理も効く。

でも、メンバーのレイヤーに降りると、選択肢が別次元になるんです。さっきの「Oに燃える/KRに燃える/Aに燃える/問題解決に燃える」なんて、マズローのどの段にも綺麗には収まらない。レイヤーが変われば、源泉のものさし自体が変わる。だから「うちの若手、何で動くんだろう」を、経営目線の粗い分類で当てにいくと、たいてい外します。

大事なのは、分類を覚えることじゃない。目の前のその人の源泉が、どこにあるかを、個別に見にいくことです。

見極める方法は、対話しかない——しかも順番がある

じゃあ、どう見極めるのか。身も蓋もないですが、対話しかありません。

前提は、「自分の思考の枠の外に、その人の源泉がいる」と思って聞くこと。自分がお金で動く人間だと、つい相手もそうだと思ってしまう。枠の外にいる、と構えて初めて、ちゃんと聞けます。

ただ、聞くだけだとダメなんです。いきなり源泉を質問されても、相手は警戒するし、そもそも答える基準を持っていない。だから先に、マネージャー側の自己開示が要る。「僕はこういうことに燃えるんだよね」と、先に自分を開く。それで場の心理的安全性が上がって、相手も話せるようになる。(この“場の設定と信頼が先”という話は「忙しくてフィードバックできない」は、順番が逆にも書きました。)

その土台は、「達成できないのは、マネージャーの責任」

そして、自己開示より、もっと下にある土台があります。マネージャーが、メンバーの目標達成に全力を尽くしていること。これに尽きます。

「達成しないから怒る」——僕は、これが本当に意味が分からない。達成していないのは、マネージャーの責任です。だって、達成させるのがマネジメントなんだから。このスタンスに立てているかどうかで、対話の質が根っこから変わる。「この人は、自分の達成のために本気で動いてくれる」と伝わってはじめて、人は源泉を開いてくれます。逆に、詰めるだけの上司に、誰が本音の“燃えるポイント”を明かすでしょうか。

いきなり「夢」や「お金」で釣るな——土台が先

ここで、マネージャーのいちばん多い失敗を、2つ。

ひとつは「夢はないの?」系です。モチベを上げようとして、いきなりキャリアの話や夢の話を持ち出す。でも、たいてい刺さらない。勘違いしがちですが、キャリアの話が刺さらないんじゃないんです。「あなたと話す、キャリアの話」が刺さらない。知らない人に急にキャリアを聞かれたら、嫌でしょう? それと同じです。

もうひとつは、もっと分かりやすい。「お金」です。日頃、対話もしていない上司が、モチベの下がったメンバーに、急に「お金あげるから、頑張れよ!」とやる。……いつの時代の、何の話だと思いませんか。

夢も、お金も、根っこは同じ失敗です。日頃の対話という土台をすっ飛ばして、上から一発(夢)や、外から一発(お金)で、人を動かそうとしている。土台が下にあって、はじめて、上に積み上がるものがある。順番を飛ばすから、外すんです。

僕の基本はこうです。まず、マスト(やらなきゃいけないこと)を一緒に達成する。そのプロセスの中で、できたこと(Can)を、すかさず褒めて、言語化してあげる。「これができたよね、じゃあ次はこうだよね」と。そうやってCanを積んでいく対話の中に、少しずつWill(どうありたい)を織り交ぜていく。Must → Can → Will。この順番じゃないと、回りません。

結局、型は「How」じゃなく「プロセス」だ

「じゃあ、源泉のタイプ別に、こう接すればいいんですね?」——と、型(How)を求めたくなる気持ちは、分かります。でも、そういうマニュアルは、たぶん無い。

源泉が分かったら、どうなるか。その人が、ご機嫌に働いて、成果が出るようになる。これがゴールです(この“ご機嫌に働ける”状態についてはスキルマップは「作る」ものではなく「貯まる」ものにも書きました)。でも、そこに至るまでにやっていることを分解すると、実はいつも同じなんです。一緒に達成する。できたことを言語化する。「どうありたい?」を聞く。この対話を、繰り返しているだけ。

だから、「どう接するか」に、覚えるべき型があるわけじゃない。むしろ、逆です。この“一緒に達成して、言語化して、どうありたいを聞く”というプロセスを回していると、その人にどう接すればいいかは、自然と分かるし、自然とできるようになる。「この人は貢献型だから、こう接しよう」なんて、頭で考えなくていいんです。プロセスを通して、その人のことが分かっているから、接し方のほうが、勝手に立ち上がってくる。強いて型と呼ぶなら、この“接し方が自然に立ち上がる状態をつくるプロセス”そのものが、型なんだと思います。源泉のタイプ表を覚えるより、このプロセスを回すこと。それが、遠回りに見えて、いちばんの近道です。

おわりに

部下のモチベーションは、「お金か、承認か」では動きません。源泉は、もっと細かくて、人によって別次元にある。それを当てにいくのは、対話しかない。しかも、自己開示と「達成は自分の責任」という土台があって、はじめて相手は開いてくれる。そこから、Must → Can → Will の順で、その人のありたい姿を、一緒に見つけていく。そのプロセスさえ回っていれば、どう接するかなんて、自然と分かるし、自然とできるようになります。(源泉が分かったあと、だれてきたメンバーをどう動かし“続ける”かは「モチベーション管理」なんて、存在しないに書きました。)

コレドウがAIで支えているのも、この対話のプロセスです。目標を一緒に具体化し、達成を後押しし、日々の振り返りを積み重ねる——マネージャーが、一人ひとりの源泉に向き合う余白をつくる。(プロダクトの詳細はこちら)目標・対話・評価をひとつの循環として回す全体像はパフォーマンスマネジメントとはにまとめています。

関連記事