コレドウ
評価運用

「決まっていますか?」に、○がほとんど付かなかった——コレドウ大感謝祭 第3回レポート

曽良 竜太 (コレドウ代表取締役)
「決まっていますか?」に、○がほとんど付かなかった——コレドウ大感謝祭 第3回レポート

この記事の要点

  • 経営が設計すべきは、①1on1の目的と間隔 ②成果への報い方(金銭・非金銭)③浸透させたい文化とその方法 の3つ
  • 参加者に○△×で自己採点してもらうと、並んだのはほとんど△。決めてはいるが、機能しているかは分からないという回答が続いた
  • 「部下のほうから1on1をやろうと言ってくる」という話が出た。設計が効いている状態は、上司が頑張っている状態ではない

8月24日、第3回のコレドウ大感謝祭を開催しました。参加者は人事の実務家、経営者、独立して事業をされている方など。半分ほどが、はじめましての方でした。少人数の回だったこともあって、全員が自社の実態を持ち寄る時間になりました。

前回はコレドウ・パフォーマンスマネジメント全書の第1章、マネジメントがうまくいかないのはマネージャーのせいではないという診断の部分を扱いました(前回のレポート)。今回はその続きで、第1章の付録にあたる部分です。

診断が「経営の設計の問題だ」なら、次に来る問いはひとつです。**では、何を設計するのか。**

経営が設計すべき、3つのこと

進行はコレドウの齋藤。今日は自分から答えを出すことはしない、持ち寄ってほしいのは参加者自身の経験のほうだ、と断ってから始まりました。

出されたのが、次の3つの問いです。

**① 1on1**——部下と何のために、どの間隔で、何を話すか決まっていますか

**② 成果に対する報い方**——金銭的・非金銭的を含めて、高い目標を掲げた人に何で報いるか決まっていますか

**③ 文化**——浸透させたい文化と、その浸透のさせ方は決まっていますか

まず個人でそれぞれに○・△・×をつけ、そのうえでグループで話す、という進め方です。独立された方には、前職やクライアント企業に当てはめて考えてもらいました。

並んだのは、ほとんどが△だった

そして始まってみると、○がほとんど付きませんでした。

印象的だったのは、決まっていないから×なのではなく、**決まってはいるけれど機能しているかが分からないから△**という回答が続いたことです。

「対話については、去年制度を入れたときに1on1を絶対にやれと仕組みの中に入れました。月に一回、これは絶対と。何のためかというと、評価しなければいけないタイミングでびっくり評価をしないように、定期的に部下の状況を見るためです。ただ、決まってはいるんですけど、機能しているかは別の話で、三角ですね」

「パーパスを作るプロジェクトと浸透させるプロジェクトが、人事とはまた別にあります。個別にやったりワークショップをやったり。バリュー評価も取り入れています。でも、みんながパーパスを自分ごとにしているか、それが文化になっているかと言われたら、分からないんですよね」

この感触が、3つの問いに共通して出てきました。制度がないから困っているのではなく、**あるのに手応えがない**。前回の診断と地続きでした。

全書の付録には、この△の正体にあたる記述があります。**判断軸は、文書では配れない**という話です。

配れるのは様式や手順書、ルールといった形式だけ。迷ったときの拠りどころや、評価の線引きといった判断軸は、繰り返し示すしかありません。

だから「決めた」と「回っている」のあいだに隙間ができます。形式は配れているので、決まっていないわけではない。でも判断軸は渡っていないので機能しない。**○でも×でもなく△になるのは、そのためだと思っています。**

「部下のほうから、やろうと言ってくる」

その中で、毛色の違う話が出ました。一万数千人規模の会社で、1,200人ほどの事業体の評価制度を作った経験のある方です。

「1on1の方法も、どの間隔で何を話すかも、ガッツリ決めていました。1on1は絶対にやる、というところは必ずやっていましたね。成果に対しては金銭的・非金銭的の両方があって、金銭はけっこうドラスティックに差をつけていました」

そして、こう続けました。

「皆さんと話していて感じたんですけど、私がいた会社って、部下のほうがとにかく評価をしてくれとか、1on1をやろうとか、今の進捗はこうですと言ってくる会社なんですよ。だからこっちが怠けたいなと思っても、怠けられない。そういう環境設定はあったかなと思います」

**設計が効いている状態というのは、上司が頑張って回している状態ではないのだと思います。**部下の側から要求が来るので、回さざるを得なくなっている。マネージャーの善意や気合いに依存していないから、続く。

同じテーブルでは、退職率がグループ内でも極めて低い会社の話も出て、そこには称賛の文化があるという指摘もありました。報い方と文化が、別々の施策ではなく繋がっている例だと思います。

全書では、決まっていない部分を空白と呼んでいます。空白は消えないので、現場が各自の解釈で埋める。**属人化とは、空白を埋めた跡のこと**です。増やすべきなのは優秀な人ではなく、決まっていることの量のほうだということになります。

「それは、外資だからですか」

これに、日系企業出身の参加者から質問が出ました。

「それは、外資だからそうなんですか」

話していた方は外資系を6社経験されていたので、自然な問いだったと思います。

これに対して、志水さんがはっきり否定しました。外資系だからというわけではありません、と。パフォーマンスマネジメントが仕組みとして機能しているかどうかという問題だ、と。

言われてみれば、僕自身も日系のIT企業で同じ光景を見ています。部下の側から「最近やってくれないんですか」と言われるし、1on1を何度も飛ばすマネージャーは、それだけで問題があると見なされる。降格の対象にすらなります。

日系でもできている会社はいくらでもあるし、外資系でも機能していない会社はある。**違いは国籍でも企業文化の気質でもなく、パフォーマンスマネジメントが設計され、運用されているかどうかです。**

「うちは日系だから」は、よく使われる説明です。それが外れると、残るのは決めるか決めないかだけになります。

高すぎる目標には、「なぜ」が入る

②の報い方では、こんな話も出ました。

「高い目標と言っても、レンジに対する目標の幅が決まっているんです。だから極端に高いものを置いたときには、それはおかしいんじゃないですかという指摘が必ず入る。それだけできるなら、なぜそのポジションに置いているんですか、と」

これは面白い設計だと思いました。高い目標は歓迎されるけれど、等級と釣り合わない目標が出てきたら、目標ではなく**配置を疑う**。目標が処遇と繋がって設計されていると、こういうチェックが働きます。

文化は、どうやって創るのか

③の文化については、参加者として来ていた顧問の志水静香さんから、参加者に問いが投げられました。

「文化って、どうやって創っていますか」

答えたのは、ブランディングの仕事をされている参加者でした。

「育まれた価値観、みたいなところを、ブランディングに落とし込むことが多いです」

それを受けて、志水さんがこうまとめました。

「まさに組織で大切にしたい価値観ですよね。大事にしたいことが組織の隅々に浸透していく、ということです」

創るというより、すでに育まれているものを見つけて言葉にする。**ゼロから発明するのではない**という話です。

全書では、文化を**繰り返し示された判断基準の蓄積**だと定義しています。だとすれば、浸透しないと嘆いている状態は、まだ一度も示していない状態と同じかもしれません。

これに関連して、監査法人からの転職経験がある方の話も出ました。

「トップダウンが強すぎて、下の人が上に何も言えない文化があったんです。だから、その逆の文化を浸透させるというプロジェクトをずっとやっていました」

浸透させたい文化を決めるというのは、いま何が起きているかを直視するところから始まるのだと思います。

3つとも、経営にしか決められない

1on1を何のためにやるのか。高い目標に挑戦した人に何で報いるのか。どんな文化を浸透させたいのか。どれもマネージャーが個々の判断で決める話ではありません。決まっていないまま降りてくるから、解釈が人によって変わり、当たり外れが生まれます。

前回の診断が「マネージャーのせいではない」だとすれば、今回は「では経営が何を決めるのか」でした。

次回の大感謝祭について

大感謝祭は月に一度開いています。全書を扱いながら、参加者同士で自社の話を持ち寄る会です。人数は多くありませんが、そのほうが全員が話せるので良いと思っています。

毎回参加いただく必要はなく、2〜3ヶ月に一度くらいで来ていただければ。ご案内は大感謝祭のページにまとめています。

そして今回の3つの問い——1on1・報い方・文化——は、そのままご自身の会社で使えます。○がつくか、△がつくか。それだけでも、次に何を決めるべきかが見えてくるはずです。

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