「マネージャーの当たり外れ」の正体——コレドウ大感謝祭 第2回レポート
ほぼ毎月ひらいていく「コレドウ大感謝祭」第2回を開催しました。
今回は30名を超える方にご参加いただきました。
合言葉は前回と同じ、「制度より、運用」。経営者、人事責任者、組織づくりの支援を仕事にするプロまで、立場の違う参加者がテーブルを囲みました。
今回から新しい試みが始まりました。
コレドウがまとめている「コレドウ・パフォーマンスマネジメント全書」(全10章)を、この会で1章ずつ解説していく連載形式です。初回のテーマは第1章。そのタイトルがそのままこの日いちばん盛り上がった論点でした——マネジメントがうまくいかないのは、マネージャーのせいではない。経営の設計の問題だ。
このお題に対して今回は、ファシリテーターに取締役の齋藤、解説役に曽良(かつら)と、顧問の志水静香さん(株式会社Funleash 代表)というフォーメーション。齋藤が進行しながら曽良に解説を振り、要所で志水さんが一段深くする——という掛け合いで進みます。
今回は私(曽良)が出役だったため、第三者の視点でレポートをお届けします。
症状は4つ。でも、病気は1つ——第1章のはじまり
第1章の入り口は、「心当たりは、ありませんか」。
マネージャー研修をやった。受講直後は良い顔をしていたのに、3ヶ月後、現場は何も変わっていない。
管理ツールを入れた。最初の期だけ入力されて、いまログインしているのは人事だけ。
評価制度を1年かけて改定して説明会もやったのに、期末の不満の量は前と同じ。
そして「マネージャーの当たり外れ」という言葉が、社内で普通に使われている——
どれも、真面目な会社ほどやっている打ち手とその結果です。
実際、人事評価に不満を感じた経験がある人は約7割。評価をきっかけに転職を検討した人は65.5%にのぼります(Job総研2025年調査)。
打ち手は毎回変わるのに、結果は毎回ほとんど変わらない。この負のループに対する第1章の診断は、シンプルでした。症状は4つあるけれど病気は1つ。
目標・対話・評価が「回り続ける仕組み」の不在です。枝を切っても根が残っていれば、また生えてくる。だから打ち手が毎回、振り出しに戻るんです。

では回り続ける仕組みとは何か。
期初に目標を書いて提出して終わりの「点」の運用と、期中ずっと開かれる共通言語になる「線」の運用。
制度の精緻さは、どちらになるのかを決めません。決めるのは運用の設計です。
この終わらない「線」の運用には名前があって、それがパフォーマンスマネジメント。志水さんが前回“らせん”と表現した、あの循環です。評価はらせんの部品のひとつにすぎない。だから、評価制度だけを取り替えてもパフォーマンスは出ない——ここまでが導入でした。

齋藤のまとめは一言でした。「目標を管理するな、目標で人を動かせ。数字どうなった?と聞き続けても人は動かない。最初は恐怖感で動くけれど長続きしない。目標によって人が動く状態をつくらないと、管理したとて何も動かない」。
テーブルから出てきた、リアルな風景
1回目のテーブルディスカッションのお題は「ここまでの話の中で皆様の会社の現状はどうですか?」です。
齋藤の指名で各テーブルの代表がそれぞれの現場の現状を持ち寄って発表しました。

「いろんな研修をしてみたけれど、結局うまくいかない、の堂々巡り。大企業にいた方からは、評価された結果つまらないから辞めてしまったという話も出ました。」
「上司とメンバーの面談は実施しているけれど一方通行で、意見が言い出せないこともある。また、理想はわかっていても現場はプレイングマネージャーが多くて、忙しくて見ていられないという現状もあります」
「小さい会社だと評価は社長が決めてしまう。制度があるようでないという会社の話と対照的に、納得感を求めて職種別に評価制度を細かく作り込んだ結果、制度が肥大化して、かいつまんで説明しても1時間かかる。作り込むほど重くなるという制度の課題の話が出ました」
一方でうれしい共有も。
「この7月からコレドウを導入して、絶賛目標を修正しながら回しています。今日は曽良さんに、ああいうのもお願いします、こういうのもお願いしますと言おうと思って来ました(笑)。ミッションシートの定義や価値観を揃えて、会社として同じ基準で目標を作れるようにしたい。AIに手伝ってもらいながら目標設定できるのは本当にいい。皆さんにおすすめしています」
先週リリースしたばかりのAIチャットアシスタント「コレドウ君」にも、さっそく気づいていただきました。ありがとうございます!
「忙しくてできない」への、志水さんのコメント
ここで志水さんからコメント。
「さっき、忙しいという話がありましたよね。これ、どこの会社も絶対言うんです。でも、それがやれないんだったらマネージャーの役割を果たせていない。他の業務を投げ打ってでも——いえ、逆に言うと、マネージャーはこれだけやっていればいいくらい重要な仕事。これをきちんとやっていれば部下が仕事を自ら遂行してくれるので、マネージャー自身のやることはそんなにないんです。忙しいと言っているマネージャーは、実はこれができていないから全部自分に業務が返ってきているはず。悪循環になっています」
実際に「マネージャーはこれだけやっていればいい」と正式に言い切っている会社も最近はでてきている、という補足も。AIが職場に入ってくるこれからは、なおさらこのパフォーマンスマネジメントがうまく機能しているのかどうか。この比重が上がってきます。
「当たり外れ」の正体は、決まっていないこと
後半は第1章の核心へ。齋藤が曽良に解説を振ります。マネージャーの当たり外れは、なぜ生まれるのか。
曽良の説明はシンプルでした。「対話をどうやるのか、何を評価するかが組織として明確に決まっていないなら、誰が決めるのか。マネージャーがそれぞれ決めますよね。一人ひとりの経験、スキル、趣味嗜好で『俺はこれがいいと思う』とやるしかない。全員属人化する。結果どうやったって当たり外れが出るんです。そうすると会社の文化との相性ではなくマネージャーとの相性で当たり外れが決まる」
だから、マネジメントがうまくいかないのはマネージャーのせいではない。経営の設計の問題だ——全書の表紙に掲げた一文です。

齋藤から経営者への問いかけはこうでした。「経営会議のアジェンダの現状でいうと、売上進捗が一番で、資金繰り、採用状況、新規事業の進捗。どこかに目標・対話・評価のらせんが回っているかという議題はありますか。ほとんどの企業は入っていません。その仕組みが回っているかどうかという視点すらないケースが多いんです」
「決めましたか?」では届かない
では経営は何を設計するのか。ここからは全書第1章の付録パートです。
出発点は「決定の不在」。間違った決定をしているのではなく、そもそも決めていない。
マネージャーは何のために、どのくらいの間隔で、何を部下と話すのか。
高い目標を掲げ成果を発揮した人に何で報いるのか。
何を評価して、何を評価しないのか。
「決まっている会社をほとんど見たことがない」と曽良。
ただ、「決めましたか?」と聞くと、「決めました、経営会議で何度か話しましたよ」と返ってくる。でもそれは、問いが浅いから決まっていると答えられてしまうんです。
代わりの問いは3つ。
・同じ目標案を10人のマネージャーに見せたとき、同じ判定が返ってきますか?
・マネージャーが判断に迷ったとき、参照するものは用意されていますか?
・「来期10億いくぞ」の、なぜ10億なのかは、現場まで届いていますか?

答えられないなら、決まっているのは形式であって、判断軸ではない。
そして判断軸は文章にして配っても伝わりきらない。「これは評価しない、と評価のたびに繰り返し言い続ける。このやり方じゃなくてこういう対話をしよう、と伝え続ける。
その対話を続けることでしか浸透しない。それが対話であり、文化を作る作業なんです」
運用が設計されていないまま、現場が独自の解釈で埋めて、当たり外れが出る。そのサイクルの中で「研修だけ入れましょう」をやっても——冒頭の負のループの話に戻ります。
「診断が間違っているのだから、同じ打ち手を打っても意味がない」。
PL責任はあるのに、部下の給与は知らない
設計の前提としてもうひとつ、マネージャーに「渡しているもの」と「渡していないもの」の棚卸しの話が出ました。象徴的な例が、PL責任を持っているマネージャーが、働いているメンバーの給与を知らない。
「メンバーの給与をわからない人が、どうやってPL責任を持てるのでしょうか?」会場のあちこちで苦笑が漏れます。責任と権限の対称性が崩れていると、どうやっても設計はできない。だからまず棚卸しを、という話です。

志水さんからの補足が、また踏み込んでいました。
「私はクライアントに、評価者が部下の給与を決めるように権限を与えてくださいとお願いしています。PLを持たせているんだから。管理させて責任だけ負わせて、「決める」という権限を与えていないということですよね。必ず議論になります。こんな懸念があるという声もでてきます。議論が起こること自体が進化です。『今の組織の成熟度ではまだ無理だ』でもいい。『じゃあそのために何をするか、どのような支援が必要なのか』を議論すればいい。
その議論もしないで、今まで見せていないから見せられません、ではマネージャーが育つわけがありません。」
「自分たちの当たり前を疑ったほうがいい。今までやっていたからではなく、時代は変わっているのですからマネジメントも進化させないと」
志水さんは、前職の外資系企業の例もいくつか紹介してくれました。
「たとえ数字を大幅に達成していても、チームのメンバーから尊敬されていない、チームとしての成果が出ていない社員に対しては4段階の一番下の評価を付けることがありました。
それは会社からのメッセージなんです。一人で成果を出してもダメ、リーダーとしてチームで達成しろというメッセージ。私がいた会社だけではなく、GAFAやNetflixなど成果を出し続けている企業も同様。各社とも理念や価値観は違うけれど、これはやっていい、これは評価しない、これはしてはダメ、を明文化しています。大切なことは思想を評価制度とつなげて運用していること。それがやがて組織文化になるんです」
2回目のディスカッション——「うちなら、ここを変える」
志水さんの提案で、2回目のテーブルディスカッションのお題は
「実現可能かは脇に置いて、自社(または支援先)のここを変えたらきっと良くなるを考え対話する」
各テーブルから出てきた意見を一部紹介します。
「成果と評価が直結せず、納得できないケース。営業成績は抜群なのに、後輩育成やチームビルディングで評価されず昇格できない。インセンティブでしか給与が上がらないジレンマで、結局その方は辞めてしまった。納得できる評価制度と透明性が重要なのではないか」
「前職では、目標への納得度が全体的に低かった。本来は経営が今期何を目指すかを決めて、組織に落ちて、個人の目標まで細分化されていくはずが、一部真逆だった。期が始まったからと、上の目標がふんわりしたままボトムアップで個人目標を先に作る。数ヶ月して社長が全社員会で今期の方針を話したとき、自分の目標と会社の方向性が整合していないと気づき、モチベーションが下がってしまう。毎年それが起きていたのに、人事として打つ手を作れなかったのが自分の反省です」
目標・対話・評価のらせんが「上から順に」つながっていないと何が起きるか。第1章の内容を、そのまま実例で裏書きするような共有でした。
全10章、1章ずつ。
締めは今後の予告です。全書は全部で10章。この感謝祭を通して1章ずつ解説し、参加者とのディスカッションを重ねながら、内容そのものもアップデートしていきます。今日の第1章は、その入り口でした。
このあとは恒例のネットワーキング。出来立ての料理とともに、テーブルのあちこちで「うちの評価制度」の話が続いていました。評価の話は、つらい話ではなく、面白い話にできる。この会がそういう場になってきたことが、何よりの収穫です。
コレドウ・パフォーマンスマネジメント全書の抜粋版(10枚)は、こちらで公開しています。
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