AIで目標設定はどこまでできるのか——数百件の採点データで分かった、効く場所と効かない場所
この記事の要点
- ChatGPTに目標を書かせると、それっぽい文章が一瞬で出てくる。でもそれは目標設定ではなく作文
- AIが効くのは「生成」ではなく「質問と添削」。数百件の採点データで最も差がついたのは、期末に評価できるかどうかだった
- AIに判断軸は作れない。会社の判断軸をAIに載せたとき、はじめて目標設定のAI活用は機能する
「ChatGPTに目標を書かせてみたんですよ」
最近、こういう話をよく聞くようになりました。等級や職種を伝えて、SMARTで書いてと頼む。すると、それっぽい目標文が一瞬で出てきます。数値が入っていて、期限があって、文法的にも完璧。多くの会社の目標シートに並んでいるものより、よほど整っています。
でも僕は、この使い方には反対です。理由は倫理でも精度でもありません。それは目標設定ではなく、作文だからです。
AIに目標を「書かせる」と、何が起きるか
そもそも目標は何のために立てるのか。達成するためです。当たり前のようで、ここが一番抜け落ちやすい。
ChatGPTに書かせた目標文は、確かに整っています。でもその目標は、あなたの会社の等級とも、本人のスキルとも、マーケットの状況とも、何とも整合していません。もともと適当に作っていた目標を、それっぽく清書しただけ。「何のために」が抜け落ちた瞬間、目標はただの作文になります。それこそ、制度のための無駄な行為です。
たちが悪いのは、見た目では区別がつかないことです。仮にAIが書いた文章と、考え抜いて書いた文章がまったく同じだったとしても、そこに至った解像度がまるで違う。なぜこの数字なのか、どうやって達成するのか、何を捨てるのか。それを考えた人と考えていない人では、同じ目標文でも達成確率がぜんぜん違います。目標は書けた瞬間に価値が出るものではなく、達成されてはじめて価値が出るものだからです。
だから、AIで目標設定を効率化したいと考えている方に最初にお伝えしたいのは、これです。目標文の生成をAIに任せてはいけない。では、AIは目標設定の役に立たないのか。逆です。効く場所が違うだけです。
AIが効くのは「生成」ではなく「質問と添削」
コレドウでは、書かれた目標文を6つの観点——目標の明確さ、達成基準の明確さ、手段の具体性、三者整合性、期末に評価できるか、本人の行動で動かせるか——で採点していて、これまで数百件を分析してきました(分析の詳細は「コレドウの目標は質が高い」を、6項目すべての有意差で確かめたに書いています)。
AIとの対話を重ねて作った目標と、そうでない目標を比べたとき、最も大きな差がついた観点は何だったか。文章の綺麗さではありません。「期末に評価者が迷わず判定できるか」でした。6観点の中で効果量が最大です。
これはAIの得意分野を正確に表しています。人が目標を書くとき、書けない箇所は決まっているんです。達成基準の段階化(どの水準なら何点か)、行動の頻度、成果と行動の区別。たとえばこうです。
- 書き換え前:「業務効率化の推進」——達成基準「効率化施策の実行」、手段「スケジュール管理の徹底など」
- 書き換え後:「請求書処理のリードタイムを月末3営業日から1営業日に短縮する」——達成基準「⑤1営業日以内/③2営業日/①現状維持」、手段「4月に現状フローを棚卸し、5月にチェックリスト化、6月から新フロー運用」
書き換え前も、欄はぜんぶ埋まっています。足りないのは文章量ではなく、判定できる水準と、カレンダーに置ける行動です。そしてこの具体化は、型に落とせる。型に落とせるものはAIの独壇場です。
もうひとつ、データから分かった面白いことがあります。AIを少しだけ使った人は、評価可能性だけが上がって、手段や行動の質はほとんど変わりませんでした。表面的にテンプレ化されただけです。一方で使い込んだ人は、手段の具体性と自己統制可能性という「実行段階」の質が伸びていた。AIとの対話を重ねた人ほど、どう動くかの解像度が上がっていく。生成は一瞬でできますが、解像度は対話でしか上がらないということです。
コレドウのAIは、質問をします
だからコレドウのAIは、目標文を勝手に生成しません。質問をします。
「その数字は何のためですか」「達成できたとき、何がどうなっていますか」「そのために最初の1ヶ月で何をやりますか」——ユーザーが答える。答えたことをAIが整理する。また質問が来る。このやりとりの中で、目標が出来上がっていきます。
僕らが一番良くないと考えているのは、質問が出ないことです。質問が出て、回答することによって、目標はできあがる。逆に言うと、質問なしで出てきた目標文は、誰の頭の中も通っていない。コレドウのアウトプットを他のAIに見せて「同じように作って」と頼めば、同じような文面は作れますよ。でも意味がない。文面ではなく、そこに至る問答が目標の中身だからです。
設計上、もうひとつ決めていることがあります。AIに捏造させない。本人が言っていないことを、AIが想像で補って書くことを許していません。AIはあくまで相手の意見をまとめる人、コーチングをする人として振る舞う。目標の中身は、あくまで本人と上長のものです。
会社の判断軸をAIに載せる
ここまでは個人の目標の話です。組織で使うなら、もう一段あります。
コレドウでは、会社の等級定義や評価制度をインポートできます。すると、AIの質問と添削がその基準に沿ったものになる。「あなたの等級で期待されているのはこの水準ですが、この目標はそこに届いていますか」という壁打ちが、全社員に対して同じ基準で行われます。
これが何を解決するかというと、マネージャーの当たり外れです。何を評価するかが決まっていない会社では、マネージャーが各自の経験と趣味嗜好で判断するしかなく、全員が属人化する。判断軸を文章で配っても浸透しない。でも、基準を載せたAIが目標設定のたびに同じ問いを投げるなら、判断軸は研修ではなく日常の中で配られることになります。
さらにアクションプランまで詳細に出すことで、上長とのすり合わせが容易になります。何のために何をするのか、結果として何を目指すのか。ここがクリアになると、そこに対話が生まれる。その対話を通して文化ができて、判断軸はより強固になっていく。AIが目標を作るのではなく、AIが対話の土台を作り、対話が文化を作るという順番です。
よくある質問
Q. ChatGPTで目標設定をするのはダメですか?
A. 壁打ち相手として使うのは良いと思います。「この目標の弱点を指摘して」「達成基準を5段階にする案を出して」のように、自分が考えたものを磨く使い方です。避けるべきは、ゼロから書かせて、出てきたものをそのまま提出することです。それは考えた形跡が残るだけで、達成には近づきません。
Q. 会社の目標や評価情報をAIに入れて、セキュリティは大丈夫ですか?
A. 一般向けのチャットAIに入れる場合は、入力データが学習に使われる設定になっていないかを必ず確認してください。コレドウは入力データを他社のモデル学習に使わせない構成で運用しています。等級定義や評価制度といった内部情報を扱う前提のツールなので、ここは設計段階から分けています。
Q. AIで作った目標を、上司はどう扱えばいいですか?
A. 「AIと何を話してこの目標になったのか」を聞いてください。問答の過程にこそ本人の考えが出ます。文面だけ見て承認すると、作文にハンコを押すのと同じことになります。
AIは目標を書く道具ではなく、質問してくる相手
まとめます。AIに目標を書かせると、それっぽい作文が手に入ります。AIと目標を作ると、達成確率の高い目標と、判断軸の通った対話が手に入ります。同じ「目標設定 AI」でも、この2つはまったくの別物です。
目標設定が苦手な人は、書く技術がないのではありません。問われていないだけです。何のためか、どこまでやるか、どうやるか。それを問い続けてくれる相手がいれば、目標は書けるようになる。AIの価値は、その問いを全社員に、毎回、同じ基準で投げられることにあります。
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