コレドウ
評価運用

並外れた成果を出していれば、行動はどこまで許容されるのか——コレドウ大感謝祭 第4回レポート

・曽良 竜太 (コレドウ代表取締役)
並外れた成果を出していれば、行動はどこまで許容されるのか——コレドウ大感謝祭 第4回レポート

この記事の要点

  • 第4回は、全書第6章「対話とフィードバックは、場の設計で決まる」をケース討議で扱った。題材は、売上の半分をつくりながら部下を疲弊させる部長・山田さん
  • 各テーブルの結論は2つに集約された。問題は山田さん自身だけではなく、会社が何を大事にするかを決めず周知もしないまま、売上だけで人を部長に置いたこと
  • 山田さんの役割を変えるかどうかより先に、日常のフィードバックの場があったかが問われる。臨界点まで黙っていて期末にまとめて伝えるから、異動も退職も事故になる

9月25日、第4回のコレドウ大感謝祭を開催しました。人事の実務家、経営者、組織づくりを仕事にする方など、今回もはじめましての方が多い回でした。

第4回にご参加いただいた皆さんと
第4回にご参加いただいた皆さんと

前回まではコレドウ・パフォーマンスマネジメント全書の第1章、「マネジメントがうまくいかないのは、マネージャーの問題ではない。経営の設計の問題だ」という診断と、そこで経営が決めるべき3つを扱いました(第3回のレポート)。今回は第6章「対話とフィードバックは、場の設計で決まる」です。

今回は進め方を変えました。解説をするのではなく、ケースを一つ置いて、テーブルごとに答えを出してもらう形に変更しての実施です。

ケース:売上の半分をつくる、山田さん(仮称)

ケース:売上の約半分を一人でつくる部長・山田さん(当日の資料より)
ケース:売上の約半分を一人でつくる部長・山田さん(当日の資料より)
問1・問2(当日の資料より)
問1・問2(当日の資料より)

このケースに正解はありません。以下は、各テーブルから出た考え方を整理したものです。

何が問題か:山田さん自身だけではなく、山田さんを部長にしたこと

各テーブルの結論は、大きく2つに集約されました。

一つは、山田さんを部下をマネジメントする立場に置いたこと自体が問題だ、という見方です。4番バッターを監督にしてしまった、という比喩も出ました。打てることと、教えられることは別です。

個人で成果を出せることと、人を育て、チームで成果を出せることは別の能力です。野球でもサッカーでも、名監督が名選手だったとは限らない。分かっているはずなのに、売上が上がっている人は周りも納得しやすいので、部長にしやすい。そうやって山田さんは部長になります。

もう一つは、売上という軸だけで評価していることへの疑問です。売上の半分をつくっているといっても、部下が辞めて、採用して、また育てるコストまで含めると、会社の利益に半分貢献しているとは言えないのではないか。

売上の半分と、利益の半分は違う。この視点があるだけで、「動かせない」の前提が揺らぎます。

もちろん、山田さん自身の行動にも問題はあります。ただ、その行動を評価し、その立場に置き、目をつぶってきたのは会社です。討議の焦点は、山田さんを責めることではなく、会社の側に移っていきました。

根っこは、何を大事にするかを決めず、組織に周知されていないこと

では、なぜ売上だけで部長にしてしまうのか。

各テーブルに共通していたのは、会社として何を大事にするかが決まっていない、決まっていても周知されていない、という診断でした。評価制度の項目としては書いてあっても、それについて経営と現場、上司と部下のあいだで対話がなされていない。だから、実際に人を動かしているのは売上だけになります。

山田さんを活かして営業が強いチームをつくる道もあれば、売上の半分を諦めてでも、みんなで積み上げる組織をつくる道もある。どちらかを示さないといけないのに、両方のいいところを取ろうとして曖昧になる。そこに問題がある、という意見が複数のテーブルから出ました。

正解はありません。立ち上げ期で、とにかく売上が要る会社なら、山田さんを中心に据えて、それに耐えられる人を採り続けるという判断もあり得ます。顧客がつき、安定を求める段階なら、山田さんには別の役割に移ってもらう判断になります。会社の状況で答えは変わる。

問題なのは、決めていないこと、決めたことを対話の中で繰り返し示していないことです。「社員を大切に」と言いながら売上は下げられない、と両方を握ったまま曖昧にしていると、現場は売上のほうを読みます。だって、評価は売上で決まっているのだから。

では、人事はどう動くべきなのか:マネジメントの役割を降りてもらう。ただし、フィードバックとセットで

問2では、さまざまな具体策が出ました。

多かったのは、部下を持たないスペシャリスト職や担当部長、あるいは子会社の代表のように、マネジメントから切り離したポジションを用意するという案です。処遇を下げる降格というより、役割を変える。いきなり会社から離れてもらうと売上を失うので、マネジメントの役割は降りてもらい、成果を出す力は活かす。ただし、なぜこの配置にするのか、これまでの状況を本人にきちんとフィードバックしたうえで移す。ここはどのテーブルも落としていませんでした。

誰が言うかについては、山田さんの上司はおそらく社長なので、人事から社長に働きかけ、社長が本人に理由を伝えるべきだという意見が出ました。

「これだけ貢献しているのに、と言って山田さんが辞めてしまったら」という問いも出ました。それに対しては、そうなったら仕方がない、むしろこの人に依存し続けるほうがリスクだ、という見方が示されました。いつか気が変わって転職すれば、その瞬間に売上が半分になる。そのリスクを、会社は常に抱えていることになります。

一方で、役割を変えるタイミングの話も出ました。こうした相談は、たいてい山田さんに降りてもらわざるを得なくなってから持ち込まれる。組織に置いておけない状態になって、メンバーがみんな辞めてしまってから、どうしようと。そうなる前に、メンバーが辞める前に、仕掛けないといけない。

そして、役割を変えるだけでは同じことが繰り返される、という指摘もありました。その組織状態を長く維持するには仕組みが要る。何を大事にするかを決めて評価制度に落とし、仕組みで動かす必要がある、と。

討議のあとも、テーブルを離れてケースの話が続いた
討議のあとも、テーブルを離れてケースの話が続いた

「できそう」と「できる」は違う

ここで、進行の齋藤から問いが出ました。売上を上げている人をマネージャーにするのは、特にスタートアップではほとんどの会社がやっている。売上は上がっていないがマネジメントができそうな人を部長にする、という選び方はあり得るのか、と。

これに対して、方針が曖昧な段階なら、売上が上がっている人を部長にすること自体は悪くない、という考え方が示されました。問題は、やらせてみてうまくいかなかったときに、上長である社長なり経営なりがフィードバックしていないこと。マネジメントができそうだと思っても、できるとは限らない。だから、何か起きたときにフィードバックする場が必要になる。

これは第6章の話そのものです。

山田さんは、指示された数字を必死に追ってきた人です。倒れる部下が出てから「それは違う」と言われても、「あなたが求めた数字をやってきたのに」となる。揉めるのは当然です。

なぜ揉めるのか。途中で誰も言っていないからです。

第6章:フィードバックを回避するから、事故になる

討議のあと、進行の齋藤が全書の第6章から持ち込んだのは、次のことでした。

フィードバックができない理由として、いちばん多く聞くのは「忙しくて時間がない」です。でも、その忙しさはどこから来ているのか。実態は、フィードバックが遅いのではなく、ほぼしていない。避けている。日頃フィードバックしていないから、小さなずれがずっと放置される。放置されたずれが期末に噴き出して、長時間の面談になり、ハラスメントの問題になり、インシデントになる。それでさらに忙しくなる。

日本の職場は特に、ネガティブなフィードバックを避けます。売上が上がれば「すごい」とは言うけれど、うまくいっていないことは飲み込む。飲み込んだまま臨界点まで行って、ある日「なんで辞めるんだ」「なんで異動なんだ」になる。山田さんの側から見れば、「早く言ってほしかった」です。

だから第6章は、フィードバックを個人の勇気に任せるな、と言っています。ポジティブもネガティブも、日常的に言える場を設計する。辞めるか辞めないかの覚悟を決めて口を開くのではなく、ずれた瞬間に「ちょっとずれてるよ」と言える状態をつくる。

「メンバーが辞める前に仕掛ける」と「起きたときにフィードバックする場」は、同じことを言っています。**役割を変えるかどうかの判断は最後の話で、その手前に、言える場があったかが問われる。**

ネットワーキングの時間。はじめましての方同士でも、話は自然と自社のことになる
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この回から持ち帰る、3つの原則

テーブルの議論を、原則の形にまとめておきます。

  • 成果(What)とプロセス(How)は、分けて評価する。売上が高いことと、それを達成するための行動が組織の求める水準にあることは別の評価軸です。分けられない会社では、山田さんは常に高評価のまま、ある日突然、役割を降ろされることになります
  • 何を大事にするかは、決めるだけでなく繰り返し示す。評価制度の項目に書いてあるだけでは動きません。経営と現場、上司と部下の対話の中で、繰り返し示されて初めて判断軸になります
  • 役割を変える判断の前に、言える場を持つ。配置転換も退職も、途中で誰も言わなかったから事故になります。日常のフィードバックの場があれば、二択になる前に扱えます

行動が記録に残っていれば、止めなくて済む

最後に、少しだけコレドウの話をしました。

コレドウの紹介。制度を作り直す前に、まず運用を回すという話をしました
コレドウの紹介。制度を作り直す前に、まず運用を回すという話をしました

このケースでは、山田さんを止める話をしています。でも、行動が記録に残っていれば、成果が出ているマネージャーほど止める理由がなくなります。成果(What)とプロセス(How)を切り分けて評価できるからです。

コレドウでは、目標とアクションプラン、進捗、対話の記録が期中に溜まっていきます。期末に結果と記憶だけで評価するのではなく、過程を含めて評価できる。組織が求める行動に対して、実際にどんな行動を取ったかを聞き、評価の参考を示す機能も、この会の直後に出ました。

制度そのものに手を入れるべき会社もあります。ただ、その前に、途中で言える場と、途中が残る仕組みを持つ。それだけで、山田さんの問題は「降りてもらうか、このままか」の二択になる前に、扱えるようになると思っています。

次回の大感謝祭について

次回は10月26日(月)18:30からです。全書を1章ずつ扱いながら、参加者同士で自社の話を持ち寄る会です。人数は多くなく、全員が話せる規模でやっています。ご案内は大感謝祭のページにまとめています。

今回のケースは、そのまま社内で使えます。あなたの会社に山田さんはいますか。いるとしたら、途中で言える場はありますか。それを一度、経営と人事で話してみてください。

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