1on1で話すことがなくならない人は、何が違うのか——やり方より先に決めるもの
この記事の要点
- 「1on1やってます」という会社の6割くらいは、頻度を聞くと「半年に1回」。それは1on1ではなく、評価面談です。両者の違いは、何のための時間か——1on1は前に進めるための時間、評価面談は点数をつけるための時間
- 1on1は業務そのものです。雑談もキャリアの話も、相手を知るのも、すべて「物事を前に進めるため」。マネージャーの仕事が部門の目標達成だとしたら、1人ひとりの達成をサポートする1on1以外に、やることなんてあるんでしたっけ?とすら思う
- 毎週やっても、話すことはなくなりません。目的を持って向き合えば。むしろ「1on1を通してこの人にどうなってほしいか」の半年目標を立てて、1on1自体をプロジェクトにしてしまう
いろんな会社に「1on1、やってますか?」と聞くと、「やってます!」と返ってきます。いい流れです。続けて頻度を聞くと——
「だいたい、半年に1回ですね」
……え? え? それ、1on1じゃなくて、ただの評価面談ですよね?——あくまで僕の体感ですが、「1on1やってます」という会社の6割くらいが、フタを開けるとこれです。今日は、1on1と評価面談は何が違うのか、という話をします。
半年に1回の1on1は、1on1ではない
僕は、1on1は最低でも月1回はやったほうがいいと思っていて、自分は毎週やっています。そう言うと、だいたいこう返ってきます。
「えーーー! そんなにできるわけないですよ」
この反応が出る時点で、1on1が何のための時間なのか、認識がズレているんだと思います。半年に1回、改まった場で、期の成果を振り返って点数の話をする——それは評価面談です。悪いものではありません。必要なものです。ただ、それを1on1と呼んでしまうと、本来の1on1がやるべきことが、まるごと抜け落ちます。
違いは、何のための時間か
じゃあ、1on1と評価面談は何が違うのか。僕の整理では「何のための時間か」が違います。
1on1は、目標達成のためにやるものです。つまり、物事を前に進めるための時間。だから普通に、業務です。もちろん雑談もします。相手のことを知ろうともするし、キャリアの話もします。最近業務の話をしてないな、という週が全然あってもいい。でも「じゃあ、なんでその話をしてるんですか?」と聞かれたときに、「好きだから!」とはならないじゃないですか(笑)。相手のことを知ると、何をアサインしたらいいかが分かる。何に喜んで、何に悲しんで、どんな価値観なのかが分かると、今後一緒に仕事をするときにやりやすい。ぜんぶ、前に進めるためにやっているんです。
一方、評価面談は、走ってきた期間を客観的に見て、点数をつけるための時間です。
誤解のないように言うと、1on1でも振り返りはします。日々の振り返りは、1on1の大事な中身のひとつです。ただ、それは次にどう動くかを決めるための振り返りで、点数をつけるための振り返りではない。同じ「過去を見る」でも、前に進めるために見るのか、清算するために見るのか。この2つは役割がまるで違うのに、「1対1で話す」という見た目が同じだから、混ざってしまうんです。
「毎週なんてできるわけない」は、実は仕事の放棄です
「そんなにできるわけない」に対して、僕がどう返しているかというと——できるかどうかではなく、それがあなたの仕事です、ということを、なるべく柔らかく伝えます(笑)。
プレイヤーとして成果を出すことも求められている——それは分かります。実際、日本のマネージャーの98%はプレイングマネージャーという調査もあるくらいなので、そこはしょうがないんです。でも、それでもマネージャーの仕事はマネジメントです。マネージャーの目標は、部門の目標達成。それをし続けるためには、メンバー1人ひとりが達成する必要があって、そのためにどうするかを考え続けるのが、いちばんの仕事です。だとしたら、一人ひとりの達成をサポートし、人となりを理解して、適切なアサインを考え、その中で取れるベストエフォートを探り、組織全体の戦略との整合を捉えながら経営の目標を推進していく。それをやる場が1on1だとしたら、1on1以外にやることなんて、なんかあるんでしたっけ?とすら思うんです。
「忙しくてできない」の因果が逆である話は、「忙しくてフィードバックできない」は、順番が逆に書きました。定期的に返さないから、期末が重くなって、手戻りで忙しくなる。1on1も同じです。
「話すことがなくなる」のは、目的なく喋っているから
もうひとつよく聞かれるのが、「毎週やってて、話すことなくならないんですか?」。
なくなりません。本当に話す必要がないなら、頻度を下げたらいい。それだけの話です。でも、メンバーの達成をサポートする、キャリアに向き合う、成長に向き合う——そう決めたときに、やること・話すことは、いっぱいあるんですよ。「なんか雑談しよう」と考えるから、仲の良し悪しみたいな話が関係してくる。結局、真剣に向き合えるかどうかな気がしますよね。
僕がよくやるのは、1on1そのものに目標を立ててしまうことです。「この人には、1on1を通してどうなってほしいか」の半年目標。たとえば——この子は半年くらいかけてオンボードさせて、「自分は何をしたいのか」が本人の中で言語化できている状態を目指そう、というプロジェクトにしてしまう。そうすると、毎週の1on1は、そのプロジェクトの進捗確認と次の一手の場になる。話すことなんて、なくなりようがありません。目的を持たずに喋るから、お互い「え?」となるんです。
1on1が回っていれば、評価面談は「答え合わせ」になる
じゃあ、1on1と評価面談は無関係かというと、真逆です。深く繋がっています。(2つの面談の役割の違いと、「1on1で話したことを評価に使っていいのか」の線引きは1on1と評価面談の違いに書きました。)
目標を立てて、進捗を見ながら、振り返る——これは制度ではなく、マネジメントです。それを客観的に点数にするのが、評価。つまり、給与が上がるかどうかなんて、実は目標を立てた時点でほとんど決まっているわけです。(この「給与は結果、目標は未来への投資」という話は「じゃあ、人事に伝えておきますね」に書きました。)
だから、1on1がちゃんと1on1として回っている会社ほど、評価面談は軽くなる。日々すり合わせているから、期末には「僕の認識はこうだけど、違うところある?」「いつも話している内容なので、特にないです」で終わる。答え合わせです。300社以上聞いてきた中で唯一「評価に課題はない」と言い切った会社が、週1の1on1を回していた話は、200社で唯一「評価に課題はない」と言い切った会社の、たった一つの共通点に書きました。
おまけ:たぶん「1on1」という名前が良くない
最後に、少し身も蓋もない仮説を。そもそも、なぜ半年に1回の評価面談を「1on1」と呼べてしまうのか。
たぶん、「1対1で話す場」としか言っていない名前だからです。目的も、頻度も、名前の中に入っていない。だから、1対1でさえあれば、半年に1回の査定の場も「1on1」と名乗れてしまう。実際、この場がちゃんと定着している会社は、別の名前をつけていました。……肝心の名前は一個も思い出せないですけど(笑)。
大事なのは目的です。前に進めるための時間なのか、点数をつけるための時間なのか。そして、大事なのが目的だからこそ、場の名前もそれに沿ったものにしてあげる。すると意外と、現場で定着するんですよね。
おわりに
1on1と評価面談の違いは、頻度でも雰囲気でもなく「何のための時間か」です。前に進めるのが1on1、点数をつけるのが評価面談。そして、前に進める時間がちゃんと回っていれば、振り返りは答え合わせで終わる。(評価を「点」ではなく「線」にする話はなぜ評価制度は「作っても回らない」のかに書きました。)
半年に1回の面談を1on1と呼ぶのを、今日でやめる。そこからで十分です。
コレドウがAIで支えているのも、この「前に進める時間」です。目標の進捗を可視化し、対話の記録を積み上げ、評価を答え合わせに変えていく。(プロダクトの詳細はこちら)
参考・出典
- 産業能率大学「ミドルマネジャーの人事実態調査2023」——日本の管理職の98%がプレイングマネジャー(役割分離は2.1%のみ)